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触角のある生分解性クリーナーが外洋でマイクロプラスチックを採取する

生分解性キトサンから作られた柔らかく枝分かれした粒子は、水中で最大30分にわたりマイクロプラスチックを回収することができ、回収が終わると水面に泡を立てて浮上します。

文:Anthropocene Team
2025年4月3日

マイクロプラスチックとは、5ミリ以下のプラスチック片のことで、世界中の水路や海を汚染しています。マイクロプラスチックは、衣服タイヤからはがれ落ち、環境に放出され、発生します。また肥料や、ゴミとなったビニール袋やペットボトルが細かく分解されることによっても発生します。

小さなプラスチック片を一掃することは、現在人類が直面している重要な課題です。しかし今回、研究者たちは、水中を活発に泳ぎ回り、マイクロプラスチックを採取することができる、何十本もの柔らかい触手のような付属体を持つマイクロクリーナーを作成したと報告しています。このマイクロクリーナーは役目を終えると、回収のために水面に泡となって浮上します。

水中からマイクロプラスチックを除去する方法のひとつに、膜を使ってろ過する方法があります。 しかし、このような従来の水質浄化方法は、「大量の水やオープンな環境からマイクロプラスチックを除去するには、実用的でも費用においても効率的ではない」と、ノースカロライナ州立大学(NCSU)の化学・生体分子工学者Orlin Velev氏らが『Advanced Functional Materials』誌に書いています。

マイクロプラスチックを採取する従来とは異なる方法として、研究者たちは小さな自走式モーターに注目しています。こうしたマイクロモーターの多くは、過酸化水素などの燃料を必要とする化学反応に依存しています。さらに、使用後は積極的に回収しなければなりません。

NCSUの研究者たちは、より使いやすいマイクロクリーナーを作成しました。研究チームは、ソフト樹状コロイド(Soft Dendritic Colloids: SDC)と呼ばれる材料から着手しました。これは柔らかく、分岐した粒子で、塩分を含んだ水でもあらゆる表面に付着することができます。さまざまなポリマーから作ることができます。研究チームは、甲殻類の硬い殻を形成する糖質であるキチンから作られる生分解性ポリマーであるキトサンを使用しました。

そして、乾燥したSDCを小さなペレット状にし、ペレットの片面に植物由来のオイルを注入します。ペレットを水に入れると、オイルが片側の表面張力を低下させ、ペレットを前に押し進めます。ペレットが前進すると、ペレット内のSDCが分離して広がり、水中に下降してマイクロプラスチックを採取します。

マイクロクリーナーには、ゼラチンでコーティングされたマグネシウムの小粒子も含まれています。SDCが下降してマイクロプラスチックを採取すると、ゼラチンはゆっくりと水に溶けていきます。これによりマグネシウムが露出し、水と反応して泡が発生します。この気泡がSDCを浮上させ、「採取されたプラスチック粒子を濃密で泡のある混合物」として浮上させると論文の筆頭著者であるHaeleen Hong氏が説明しています。

その混合物は、マイクロプラスチックを含んだ粒子を除去するために表面からすくい取ることができます。この論文で研究チームは、粒子が水中で最大30分間泳いでマイクロプラスチックを集めることができることを示しています。

出典:Haeleen Hong et al. Designing of Self-Dispersing Soft Dendritic Microcleaners for Microplastics Capture and Recovery. Advanced Functional